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AI関連技術に関する特許審査事例について

 近年、色々な分野でAIが活用されている話をよく聞きます。
医療もAIの活躍が期待されている分野の一つで、特に画像診断は、AIの活用が見込まれる分野の一つであると言われています。
例えばX線CT画像などを解析して病変の候補位置などを示すCADなどは、割と昔から行われています。

(ちなみにCADなどのコンピュータ診断支援装置については、開発ガイドラインコンピュータ診断支援装置の性能評価 開発ガイドライン2015)や評価指標薬食機発1207第1号 平成23年12月7日付 次世代医療機器評価指標の公表について 別添3
といった、開発の指標となる様な資料が、経済産業省、及び厚生労働省から出されています。)

なお、最近では、NECがAIを用いて創薬事業に参入するといったニュースもありました。
本当に活用の場は多岐にわたっていることが実感されます。
「NEC、最新AIを活用した創薬事業に本格参入2025年に事業価値3,000億円を目指す
~日本企業初の個別化ネオアンチゲンワクチンの治験を開始~」



ところでこのAIですが、要件を満たせばソフトウェアと同じように、特許を取得することができるとされており、現在、特許庁のHPにてAI関連技術に関する事例の説明資料が掲載されています。

AI関連技術に関する特許審査事例について
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/ai_jirei.html

同資料によると、
ーーーー
○AI関連技術等の審査は、現行の審査基準等に基づいて、特段問題なく行えていると考えられる。
○一方、AI関連技術等が様々な技術分野で発展することが予想されるところ、AI関連技術等と関連が少なかった出願人等に審査の運用を分かりやすく示すことや、特許庁として技術分野によらず統一的に特許性の判断を行うことが重要となる。
○記載要件について、発明の技術的特徴に応じて求められる開示の程度が異なるのではないかとの意見や、教師データが発明の技術的特徴として進歩性に影響する場合があり得るとの意見がある。
ーーーー
といった事情から、この様な事例集を作成、公開したとのことです。

詳細は、事例集を御確認頂ければと思いますが、ディープラーニング(深層学習)によって得られた学習済みモデルを用いたシステムも、要件を満たせば特許を取得することができるとされています。
この要件としては、例えば学習済みモデルへのインプットとアウトプットの具体的な相関関係が明細書に記載されていること、あるいは、出願時の技術常識に鑑みてこれらの間に相関関係等が存在することが推認できること。または、実際に生成された判定モデルの性能評価結果が示されていること。(即ち、判定モデルの妥当性が評価試験等によって示されていること。)
といったものが挙げられる様です。(当然、新規性、進歩性等の要件を満たす必要があります。)
学習モデルの場合、どんなインプットに対してもとりあえずアウトプットは得られるものの、妥当性のない出力をする様なモデルまでは特許をうけることができない。ということなのかも知れません。

ところで、この審査事例の中の事例50には「被験物質のアレルギー発症率の予測方法」といった例が記載されています。
この例から考えると、例えば、特定の疾病の発症率の予測システム などといった出願も、そのモデルの評価が、例えば臨床試験などで評価行われていれば(そのモデルの妥当性が示されていれば)特許要件を満たし、登録されうると考えられます。
一方、この試験結果による評価が適切なものであるか否かの判断は、果たしてどの様な基準で行うのかなぁ。判断が分かれたりしないのかなぁ。などととちょっと気になっています。
例えば、○○の予測システムの治験を行ってデータを収集し、承認申請と特許出願をしたと際に、その臨床データの評価が、PMDAと特許庁で分かれたりする。なーんてことが将来的に起きたりしないかなぁ。などと漠然と思ったりしています。
そもそも法律が違うので問題ないのだとは思いますが、臨床試験の評価となると医薬品医療機器等法の審査(PMDA)が頭に浮かんでしまうので...

いずれにしても成長著しい分野なので、知財、医療の両方の観点から、引き続き注目していきたいと思います。

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プロフィール

山越 淳

Author:山越 淳
弁理士&行政書士であって医療機器の薬事業務の経験もある筆者が、主に医療機器の知財及び医薬品医療機器等法の情報などを提供します。
なお、タイトルの”薬事”ですが、実は法改正されて現在の法律の名称は、医薬品医療機器等法(正確には医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)です。
あまりに長くて、馴染みもあまりないので”薬事”としています。

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