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AIの深層学習(Deep Learning)を活用したソフトウェア承認

先月になりますが、東京大学発のベンチャー企業である、エルピクセル株式会社が開発した、医用画像解析ソフトウェアが医療機器(医用画像解析ソフトウェア)として承認されています。
このソフトウェアは、脳MRI画像を人工知能(AI)、とりわけ深層学習(Deep Learning)を活用した技術によって解析し、脳動脈瘤の疑いがある部分を検出するもので、ディープラーニングを活用したAIのシステムが国の承認を受けたのは国内で初めてとのことです。
 
 
 
 
一般的に、医療分野はAIに適した技術分野であると言われています。これは蓄積されている膨大なデータと、求められる出力が比較的明確であるからだと思われます。
このAIの医療分野への利用は、たとえば医療画像診断の分野では、近年、CT等による画像の量が大量となっていることから、医師による読影を補助するAIによって、読影の効率化と見落としの防止が期待されています(今回の医用画像解析ソフトウェア EIRL aneurysmは、そのような事を目的とするプログラムだと思われます。)。
また、日々の診療から得られるデータを、いわゆるビッグデータとして取り扱うことで、そこから有用な情報を自動的に抽出する作業へのAI技術の活用も期待されています。また、今後は単なる診断だけではなく、治療技術に応用されることも予想されています。
 一方、AI技術を診断や治療に用いたことによって、誤診断や医療事故が生じてしまった場合の責任の所在、あるいは、機械学習などの技術によって市販後も引き続き性能が変化するというAI特有の特性から生じる問題、更には、その様なプログラムやシステムの承認審査の進め方や規制の問題など様々な課題が指摘されています。
 この様な課題を踏まえ、当局は、有識者による議論を進めており、いくつか報告書等が公開されています。
 
 
 
 
 
この中で、「AIを活用した医療診断システム・医療機器等に関する課題と提言 2017」では、はじめに現在のAI技術の概要を整理した上で、「AI 医療システムのレギュラトリーサイエンス」として、診断支援・治療支援での具体的な利用形態を想定した上で、レギュラトリーサイエンスとしての見方を示すと共に、AI医療システムの倫理・責任についても議論がされており、なかなか興味深い内容になっています。
 
同報告書では、AI医療システムの特徴として、
① AI医療システムは学習により性能等が変化しうる。(製造承認を取得した時点の性能と、実際に使用された後の性能が大きく異なる可能性がある。)
② 深層学習などの方法によりAI医療システムはブラックボックスとしての性質を有する
③ 将来、AIの支援レベルが高度化した場合、患者と医師等の関係性が従来と変わってくる可能性がある(将来の高度な自律能)。
などを挙げています。
このような特徴を考慮して、医療機器(プログラム医療機器)としての承認審査を行う必要があると考えられます。
 
なお同報告書では、その他にも様々な課題、議論等を紹介していますが、個人的には、検討すべき課題の一つとして挙げられていた「AI 医療システムの倫理・責任」について関心を持ちました。
 
現在のA Iの進歩のスピードを考えれると、近い将来、医師等よりも高度な診断支援・治療支援の能力を獲得したA Iが登場することは十分に考えられると思います。そして、そのようなA Iが登場した際に、例えば、「優秀な医師等以上の正答率であることが統計的に示されている診断支援AI医療システム(しかし一定の誤りがある)」が製品化された場合に、医師等がそのAIと異なる判断を選択することが可能なのか?
といった問題が生じてくると考えられます。
なお、同報告書では、そのようなケースについては、医師がそのようなA Iと異なる判断をすることは、訴訟リスクを考えれば、現実的には困難である。としています。そして、そのようなA Iが登場した場合には、”その場合、医師等と機械の役割は実質的に変質することになるといえる。”そして、”その事態は、医師等の職業観、使命感、充足感にも影響する可能性がある。”とも指摘しています。


表 

https://www.pmda.go.jp/files/000224080.pdf


また、上図のように、AIの進展に伴い、AIを用いた医療機器と医師の関係の変化についても示されています。現在の技術水準は、医師が主で、プログラムが医師の判断をサポートする役割となっていますが、今後、A Iが主となり、医師がそれを監督する立場となったり、究極的には医師が関与しないことも想定されるのではないかと考えられます。
 
近年のA Iの進歩は目覚ましいものがあり、4〜5年後には、案外そんなA Iを用いたプログラムが登場しているのではないかと思います。その様なとき、どのような規制がされ、また、そのような技術が、果たしてどのような知財によって保護されるのが適切なのか。というのは、非常に興味深いテーマだなと思います。




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プロフィール

山越 淳

Author:山越 淳
弁理士&行政書士であって医療機器の薬事業務の経験もある筆者が、主に医療機器の知財及び医薬品医療機器等法の情報などを提供します。
なお、タイトルの”薬事”ですが、実は法改正されて現在の法律の名称は、医薬品医療機器等法(正確には医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)です。
あまりに長くて、馴染みもあまりないので”薬事”としています。

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