記事一覧

「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」(特許庁資料のご案内)

特許庁のHPに
知財教材「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」
という資料がアップされています。

「特許庁は、デザイナーが円滑にビジネスを行い、社会で活躍するための基礎知識を修得するツールとして、調査研究に基づき、デザイナーやデザインを学ぶ学生に向けた知財教材「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」を作成しました。」(特許庁HPから引用)とのことで、 
平成28年度特許庁産業財産権制度問題調査研究「デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究」
を元に作成された資料の様です。

大学などの講義にも使える様に作成してあり、中々のボリュームですが、セクションに分かれているので関心のある項目のみ学習できる様にもなっており、独学にも使える感じですので、一度ご覧になってみては如何でしょうか?


製品のデザイン(工業デザイン)は、知財では「意匠」として保護されます。

近年では、メーカーによって製品の性能が大きく異なるものはあまり多くないため、消費者は商品の選択時に、製品のデザインを重視する傾向が強まっていると言われており、大手メーカーに限らず、(デザイナーがデザインしているかどうかは別にしても)中小企業でも製品のデザインにはこだわっていると思います。

”デザイン” というと何だか高尚で、工業デザイナーみたいな専門家がデザインしたものでないといけない様な感じがあり、特に中小企業さんと意匠権のお話すると、「特にプロがデザインしたものじゃないし..」といった反応が返ってきます。
確かに法律(意匠法)でも、
”「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。”(意匠法第2条)
などと定義されているので、ますます縁遠い感じがします。が、実務上はそんなことはありません。

現に、特許庁の意匠審査基準でも
”(1)美感について
意匠法第2条第1項に規定する美感は、美術品のように高尚な美を要求するものではなく、何らかの美感を起こすものであれば足りる。
としており、美観のないものの例として
「①機能、作用効果を主目的としたもので、美感をほとんど起こさせないもの」
「②意匠としてまとまりがなく、煩雑な感じを与えるだけで美感をほとんど起こさせないもの」
としています。
何だか余計に分かりにくくなってしまったかも知れませんが、少なくとも、高尚なデザインである必要は全くなく、ましてや、デザインの善し悪しが意匠出願の際に評価されるなんてことはありません!

意匠権の場合、特許と比べ出願費用も安く、出願から登録までの期間も短い(早ければ6ヶ月ぐらい?で登録になります)一方、権利の存続期間は20年と特許と同じで、実用新案と違って出願の内容が審査されて登録になるため、権利行使時に技術評価書を請求しなければならない。といった制約もありません。
また特許の場合は、権利範囲を判断するのに、何とも難解で得体の知れない(言い過ぎ?)文章を読み解かなければならず、そもそも第三者の製品が自社の権利範囲に入っているのか分からなかったり、あるいは判断に迷ったり、時にはその事で争いになったりすることもありますが、意匠は製品の形そのもののため、権利範囲も明確で、模倣品を見つけるのも容易だと言えます。(逆に言えば、意匠登録されていることを知った上で真似をする。というのは相当ハードルが高いと言えます。)

確かに、権利範囲が製品の形そのものなので、特徴のある部分を違う形にしてしまえば権利から外れてしまう可能性がないわけではありませんが、関連意匠、部分意匠といった制度を使えばある程度網羅的に保護を図れる様になっています。
また、以前もご紹介しましたが、コンピュータやスマホにインストールされるソフトやアプリによる画像も意匠登録できます

権利を取得する為のコスト、スピード、権利としての使いやすさを考えると、コストパフォーマンスに優れたなかなか良い権利なのではないかと、個人的には思っており、大手メーカーだけでなく、中小企業さんももっと積極的に活用してもよいのでは? 
と思います。

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

山越 淳

Author:山越 淳
弁理士&行政書士であって医療機器の薬事業務の経験もある筆者が、主に医療機器の知財及び医薬品医療機器等法の情報などを提供します。
なお、タイトルの”薬事”ですが、実は法改正されて現在の法律の名称は、医薬品医療機器等法(正確には医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)です。
あまりに長くて、馴染みもあまりないので”薬事”としています。

所属事務所

最新コメント